滑子航空機,覚書

飛行機好きで、写真を撮ったり、プラモを作ったり。

電動航空機が型式証明を取った話。

 先月、Pipistrel社がVelis Electroという電動航空機の型式証明を取得したとのニュースがでた。出落ち感はあるが、今回取得した型式証明というのはEASAのCS-LSAというもので、LSAというカテゴリーでの型式証明に過ぎない(FAAではLSAのカテゴリーはあるが、型式証明の対象カテゴリーではない)。そのため、日本で運用することは基本的にはできないということでいいはずだ。

 

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  写真は同じPipistrel社の電動航空機で、Alpha electroというもの。今回型式証明を取ったのはVelis electroという機体で、ともにVirusから発展したものである。

 なぜ、ほとんど似た機体の電動機があるのかということだが、おそらく重要になってくるのが今回の型式証明では、動力であるE-811モーターの型式も取得している点だろう。Alpha electroではPEM 60MVLCをモーターとして搭載しているが、今回は別のモーターということである。

 電動航空機の発展に対しての大きな一歩という点で言えば、このE-811を搭載すれば、エンジン(モーター)自体の型式証明は気にしなくてもよくなるということだ。ただし、離陸時の最大出力で57.6kWで約78馬力のモーターであり、一般的な単発機であるセスナ172に搭載されているエンジンO-360の半分未満の出力であることは注意したい。

 

 余談ではあるが、この機体は訓練用の飛行機というスタンスをとっており、飛行時間は50分と長距離飛行はできない(巡航速度は90kn≒166km/h)。つまるところ、バッテリーの性能は固定翼機であってもそれくらいしか飛ぶことができないものということになる。なお、バッテリー重量はAlpha electroで122kg。こちらは60分飛ばすことができるが、決して軽いとは言えない。

 

 ちなみにPipistrel社はスロベニア共和国の航空メーカーで、当初は動力付きハンググライダーやウルトラライトトライクの販売を行っていた。現在は上述の航空機だけでなく、無人航空機も手掛けている。ホームページ内の無人航空機のうたい文句がおもしろく、「Pipstrelの航空機はグライダーとして開発されたこともあり、エンジンを切った状態で、つまり対象の上空を完全に静穏で、そして赤外線の放射とレーダー反射が非常に少ない状態で多くのタスクをこなすことができる」とある。ベースとなる機体を作って様々な用途にしっかり使うあたり、したたかなメーカーだなあと思う。