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滑子航空機,覚書

飛行機好きで、写真を撮ったり、プラモを作ったり。

アンチバランスタブのはなし

今回は飛行機の話。

 

実は鳥人間サークルに昔所属していまして、昔に交流会資料に書いたアンチバランスタブの話でも、忘れないうちにコピペとして書いておこうと思います。

結構重要な機構なのですが、意外と知られていないので。

 

二年前だったかの交流飛行会においてあるチームが飛行した際、ワイヤーリンケージの機体が操縦ワイヤーの脱落によって操舵不能により危険な状態で着陸するということが起こりました。

自分は飛行会に行っていなかったのでのちに動画で見ただけなのですが、これはフライングテールの危険性が露呈したといえるでしょう。

  

 フライングテールとは安定板の無い、尾翼そのものが動くことで操舵するものであり、例えば戦闘機の水平尾翼などでよく採用されていますが、これはまたちょっとついている理由が違うので割愛。人力飛行機では軽量化のためにフライングテールを採用している例が多いでしょう。

 

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Fig.1 フライングテール

 

 さて、このフライングテールですが、たいていの場合に尾翼には対称翼を用いており、ピボット点は空力中心(コード長25%)よりやや前の20%程度の位置にとっているでしょうか。

 残念ながら、自分が所属していたチームは尾翼を毎年作るのを忘れるチームでしたので詳しくはわかりませんが、やりようはいろいろあると思います。

 ピボット点を前にすることは尾翼が発散的に動くのを防ぐためにしています。

もちろん、対称翼でなくとも、次に書く内容は当てはまります

 さてここで、風に対してフライングテールがどのような挙動を示すかを考えます。

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Fig.2 フライングテールの挙動

 

 ここで操舵不能になった際,どのような挙動になるかというと・・・

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Fig.3 フライングテールの挙動2

 

 さて、操舵不能になった際に尾翼が機体に対して正対するのではなく、風に対して正対することになるのですね。つまり、フライングテールそれ自体には全く尾翼としての安定性は望めない状態となります。尾翼それ自体が風見鶏になっているわけですね。

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Fig.4 風に正対する

 

 実際の人力飛行機ではどのようになっているか。例えばワイヤーならばパイロットが操縦桿を持つ。電気的に動かすのならサーボ(サーボタブのことではない)がトルクをがんばって持つことで空気の力によって尾翼が動くことを抑えています。

 では、操縦ワイヤーが外れるとどうなるか。パイロットの力が尾翼に伝達できなくなり、操縦不能となります。これは、飛行中にサーボが破損した場合でも同じことが言えます。そして、垂直尾翼は全く役に立たなくなります。せいぜい、慣性とフリクションで持つ程度でしょうか。つまり、垂直尾翼が無いのとほとんど同じようになってしまったわけですね。そのため、ヨー運動を止めるすべなく、スパイラル、スピンへとおちいったということです。

 

 ではこれを防ぐにはどうすればいいか。ここで、アンチバランスタブの登場です。

実は、あのダイダロスのラダーにも装備されているのですが、どうにか、日本の人力飛行機では見かけません。少なくとも、フライングテールにする際には必ず装備されるべきものだと思います。

 

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Fig.5 Evans VP-1(垂直尾翼の茶色のタブがアンチバランスタブ)

 

 さて、アンチバランスタブの動き方を示しますと、

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Fig.6 アンチバランスタブ

 

 こんな感じです。これがどのように働くのか見てみます。まず、急に斜め方向から風を受けた時を考えると、

 

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Fig.7 アンチバランスタブの効果

 

 機体に対して正対するということは、尾翼の安定板があるのと同じです。つまり、アンチバランスタブをつけるだけでフライングテールに自立的な安定性を持たせることができるのです。これがあれば、操舵不能になった際も安定板としての効果を残すことができるので、より安全になると言えるでしょう。

 では、その構造を簡単に紹介します。

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Fig.8 アンチバランスタブ構造図

 

 このように、実装する際も比較的簡単な構造で実現することができます。

 

 少しでも安全なフライトを・・・ということで、一度検討してみてはいかがでしょうか?